私の運営していた農業生産法人では一年を通じて野菜を作っていましたが、果菜類の栽培が得意で、特にナス科の作物に一番力を入れて研究していました。
平安時代にはすでに延喜式にナスの栽培方法が書かれていましたが、古くから日本でつくられてきたナスの栽培方法を基礎に、現代の進歩した技術と私が収量を増加させた技術を分かりやすく伝えて、本ブログを読んでいただいた多くの人に収量をあげていただけましたら幸甚に存じます。
そもそもナスは、単位面積当たりの収穫量が多くて収益性が高い、楽しい作物です。
しかし、ナス栽培は技術のある農家と未熟な農家で大きな差があるのが現実です。
ナスは樹勢のコントロールや管理技術がとても難しいと感じる農家も多いのではないでしょうか?
確かにちょっと油断するとナスの枝が伸び放題になって収穫に手間取り、気付けば1個500gもあるようなナスがなってしまい、ナスの株を痛めて栽培意欲をなくしてしまうことも少なくありません。
この記事のタイトルにもなっている、【アグリハック】とは野菜の栽培方法だけでなく、効率良く仕事をこなして高い生産性を上げ、生産物のクオリティを高めるための工夫のことです。
ナスの栽培はじっくり観察すると面白いことが分かりますよ。
ナスの株をじっくりみていくと、いくつかのブロックに分かれていることが見えてきます。
私はこの発見を基礎に工夫を重ねることで収量が大きく変わりました。
栽培の「見える化」
最近のビジネスシーンでは業務の「見える化」が重要視されていますが、野菜の栽培も同じです。
「見える化」とは研究と分析、仮説と検証を繰り返して初めて見えてくるものです。
野菜の栽培とは自然との調和の中で育つものです。
だからこそ自然の中でとりおくなわれる仕組みをわかりやすいように分解しなければ理解は難しいのです。
農業の5W1H
そこで「誰が」、「何を」、「いつ」、「どこで」、「なぜ」、「どのように」といったようにナスの果実に至るまでの成長から収穫まで分解してわかりやすくしました。
これでより深く理解を深めてナスの栽培を楽しみながら管理に役立ててほしいと思います。
最新の栽培技術では従来のナス栽培と比べて楽に、作業時間も短く、安定生産できるようになってきており、その技術なども紹介しています。
作物の安心と安全とは
天敵温存植物の利用ではソルゴーや雑草抑制などにリビングマルチとしてムギを利用するなどとくに進歩が目覚ましい分野です。
これにより農薬散布回数が劇的に少なくなり、防除効果も高くなっています。
わたしは基本的に無農薬栽培でナスをつくっていましたが、その目的は安心・安全をうたうことがゴールではないと考えています。
そもそも、「安心」と「安全」は本来、別々の概念であって、その意味も全く違うものです。
安心とは主観的なものであって自分自身の考えが主な判断材料になるでしょうし、安全とは客観的なもので科学的根拠によって判断されるものです。
個人的に農薬を否定するつもりは全くありませんし、必要があれば躊躇なく使います。
しかし、「美味しい野菜」って私は元気な野菜のことだと定義しています。
だから虫が寄ってくる作物は、基本的に微量要素などの何かが足りないのであって、自然淘汰されるのが運命だと考えているのです。
だからこそ、自然との調和を第一に考えて次世代に誇れる農業を伝えていきたいと思います。
今後、ご紹介させていただく栽培のデータなどはすべて自社農場のある丹波地域をもとに作成しております。
日本全国を網羅して、どこにでも通用するような技術としては通用しないかもしれません。
しかし、ナスの栽培に対するポリシーを理解することで、どこの地域であっても応用可能なはずだと考えています。
この【アグリハック】がこれから栽培の参考になって、美味しいナスが一本でも多く収穫されれば幸甚に存じます。