前回は「第21話 株元のトンネル保温でナス増収」と題して株元を保温してやることで起こるナスの生理について共有させていただきました。
今回は、応用編ということでトンネルではなく、ビニールハウスで栽培する場合の促成栽培についての省エネルギー技術を紹介させていただきます。
省エネルギーを取り巻く環境
近年、暖房用燃料の価格が高騰して、施設栽培農家の経営を大きく圧迫しています。
特に促成ナス栽培は、夜間の暖房温度が10~20℃と他の品目より高いため、暖房経費を削減できる省エネルギー技術の開発が強く求められているところでございます。
夜間暖房温度の引き下げやハウス内周辺部への被覆資材の附設等の対策が行われていますが、暖房温度をこれまでより下げることは、生育の抑制や収量の減少への影響が避けられません。
ここでは、
- 被覆資材の選定
- 高昼温低夜温管理の方法をその効果
- 株元保温方法とその効果について紹介したいと思います。
まずハウスから熱が逃げる放熱の形態には
- 被覆資材などを通過する貫流伝熱
- 被覆資材などの隙間から熱が逃げる隙間換気伝熱
- 地中への地中伝熱の三つがあります。
ハウスの放熱の大部分は①の貫流伝熱で、割合は60~100%を占めます。
ハウスの保温性を向上させ、暖房用燃料の消費量を削減するには、貫流伝熱を抑制することが効果的と考えられます。
被覆資材の光線透過率
空気層保有資材は、一般的に用いられている農ビ、農POに比べると光線透過率がやや劣るものの、60%以上の値を示し、保温率が高いことが明らかとなっています。
したがって施設内の室温を維持しながら暖房用燃油消費量の削減に有効な被覆資材として空気層保有資材が適すると考えられています。
【高昼温低夜温管理】とは、午後の気温を高めに保つ「高昼温管理」により生育促進を図り、「低夜温管理」によるマイナスの影響を緩和することを目的とした温度管理方法です。
ナスの生育、収量を維持しつつ、暖房用燃料消費量を削減する方法として有効と考えられています。
高昼温低夜温管理を開始する最適な時期
私の畑では千両ナスの促成栽培において9月上旬に定植して、主枝摘心開始後から高昼温低夜温管理を開始することが適当であると考えています。
主枝摘心から本管理を下賜すると、収量および品質を確保しつつ、燃料消費量を約40%削減できることを確認することができました。
促成ナス栽培おいて透明のフィルムで株元の茎部分を覆うトンネルを設置すると、トンネル内の気温や畝土壌の中の地温が無処理の株に比べて高くなるので商品果収量は無処理より増収し、高い省エネルギー効果が得られるという結果を得ました。
保温性に優れ、適度な光量を透過できる被覆資材を選定しましたが、この他に①防曇性、②透湿性、③展張性、④伸縮性、⑤強度などの特性についてそれぞれ留意する必要があると思います。
今後はダクトを通す、株元保温より省エネ効果が高い、局部加温の実用的な技術確立を実現したいと思います。