前回は「第70話 総合的病害虫対策(IPM)と雑草管理で減農薬」と題して、具体的な対策方法についてご紹介させていただきました。
今回は、土壌病害について解説していきたいと思いますが、これらのことはナス科全般に共通する対策となりますので必見です。
土壌消毒を実施する際の全般的な注意点は大きく分けて次の2つがあります。
- 消毒したと床土は無消毒の土と混ぜて使用しないこと
- 床土を薬剤で消毒する場合は、地面の上に直接床土を置かず、ポリエチレン、ビニールなどの上に置くこと注意しましょう。
露地栽培では、焼土法、化学的防除法といろいろな方法があるのでそれぞれの特徴も踏まえながら紹介させていただきます。
▽焼土法(育苗用)
育苗に用いる少量の土壌は、土面に横に長い穴を掘って、鉄板を渡して湿った土を乗せ、穴の中で火をたき、60~70℃で約15分間土を良く掻き混ぜながら蒸し焼きにすることで消毒できます。
効果は高いですが非常に手間です。
有用菌も死滅するのでEM菌などを利用しながらの育苗なら良い方法といえます。
▽化学的防除法
苗床や本圃の土壌伝染性病害などを対象にした薬剤が農薬登録されています。
土壌消毒剤は人畜などへの毒性が高く、気化しやすいなど取り扱いに十分な注意が必要なのでおススメはしません。
使うときにはラベルなどに書かれた注意事項を熟読したうえで誤用しないよう注意して使用するようにしましょう。
化学農薬削減のための土着天敵の活用法
露地栽培では、施設栽培のように市販の生物農薬を放飼する必要はありません。
露地栽培は野外で土着天敵が発生する時期に栽培され、ナスの畑やその周辺の雑草で増殖した土着天敵が自由にナスへ移動してくるので虫害は緩和されます。
しかし、ナスに非選択的薬剤が散布されていると、ナスに移動した天敵は死んでしまうので、害虫の防除に作影響を与えます。
このためにナスのアグリハックでは非選択的薬剤の散布は控えて選択的薬剤による防除の体系を組み立てることが必要になります。
天敵温存植物の利用
農薬に頼らない害虫防除の手法として、圃場内に土着天敵を増殖させ温存するため草花などの植物を栽培して天敵の働きを強化する手法があります。
このような植物を天敵温存植物といいます。
ヒメハナカメムシ類の発生が多く、モナルダ・シトリオドラ、アゲラタム、フレンチマリーゴールドなどがナスの栽培で利用できそうな種子繁殖性の草花としてあげられます。
スカエボラは耐寒性が高くないので、丹波地方の気温では12月に霜が降りだすと、ほとんど枯死してしまうために越冬できません。
このため毎年の植えかえの手間や苗の購入費用が高くつき、実用的ではありません。
ただし、南九州や温暖な地域ではスカエボラが越冬できる可能性もあるので、越年できる地域なら、利用できるかもしれません。
植物種の選定に当たっては、害虫だけでなく、ウイルス病など害虫の発生源にもならないかなど、近隣に栽培されている農作物を含めて弊害を十分検討してから利用する必要があります。