なぜ農業に生産工程管理が必要なのか

52週アグリMD生産工程管理システム
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農業をグローバル化していくためには低コストで生産し、お客様にお求めやすい価格で提供していくこともひとつの高付加価値であると考えています。

作物の生産プロジェクトが肥大して、複雑になってくると、勘と経験に頼っていた従来からの管理手法が通用しなくなります。

そのような農業生産プロジェクトをスムーズに進めるには、実現可能なアグリ・プロジェクト・マップ(APM)を作成し、それに従って生産チームを指揮し、農業生産プロジェクトを管理しつつ、遅れが発生したら定量的にそれを把握して、適切に対処することが必要になってきます。

本記事のテーマは、こうした定量的かつ科学的な、そしてグローバル・スタンダードに則った「進捗管理」です。

データに基づいて定量的に進捗状況を管理するには、その評価基準となるマスタースケジュールが欠かせません。

ところが、日本の農業界では国際的に通用するマスタースケジュールを描ける人がまだまだ少ないのが現実です。

多くの人は自己流で作成していますが、そのようなスケジュールは正しい進捗管理にはほとんど利用できません。

そこで本書では、わたしの経営する農業生産法人での事例をもとに説明した後に前述のような評価軸になるマスタースケジュールの作成法を最初に説朋します。

記述法として使用するのは、国際的に認知されたPERT図、およびガント・チャートです。
マスタースケジュールの実現性を確保するためにはいくつかのことが要求されます。

例えばクルティカル・パスを持つプロジェクト内の作業工程を定義する、開発規模に見合った生産期間を確保する、さらには開発フェーズの期間比率や工数比率を適切にするなどです。

農業の場合は特に重要なのがマスタースケジュールに内在するスケジュール・リスクを計画に組み込むことです。

こうして実現可能なマスタースケジュールが出来たとしても、生産プロジェクトを進めていく途中では多くの間題が発生するでしょう。

些細なものもありますが、カットオーバー遅延を引き起こすような深刻なものもあります。

それらの多くが、マスタースケジュールと実態との乖離として現れます。

この乖離をタイムリ一に把握して、原困に対処するための適切な意思決定を繰り返すことで、プロ
ジェクトはべースラインに沿って動くようになります。

これが予定通りのカットオーバーを実現するのです。

プロジェクトの進捗管理の第一歩は、正しく作成したマスタースケジュールと実態との乖離を、数値データとしてしっかりと把握することです。

その技法として、アーンドバリュー・マネジメント(EVM)を特に力を入れて解説します。

EVMは経済産業省の後押しもあつて、近年プロジェク卜マネジメントにおいて普及が加速しています。

EVMのスケジュール・べースライン(PV)作成、出来高としての実續(EV)の計算、そして現時点で予想される総コスト(EAC)の計算等、プロジェクト現場での使用法が分かるように実践的に説明していきます。

EVMは、プロジェクトが遅延したときに大きな威力を発揮します。

遅延の度合いを示すSPI/CPI分析、遅延の大きさを表すクラッシング・コスト(遅延コスト)、クラッシング・タイム(遅延時間)の計算法についても詳しく述ベます。

これらの数値を分析することによって、プロジェクトを本来のスケジュールに戻す方法が明確になるからです。

本記事のメイン・テーマはプロジェク卜の進捗管理ですが、プロジェクトの最終フェーズであるシステム・テストの進捗管理は、プロジェクト進捗管理とはまた別の難しさがあり、ノウハウも異なります。

そこでEVMを応用したテスト・シナリオの進捗管理法について、1つの章を割いて説明します。

これは、1つのテスト・シナリオに含まれる複数の取引と検証項目を、EVMを使って進捗管理する方法です。

EVMの総まとめとして、実際に使われたAPMS(アグリ・プロジェクト・マネジメント・システム)の事例紹介を通して、農業生産プロジェクトを現場で活用するためにEVMの使い方を示します。

EVMによる進捗状況の表示法や、個々の生産プロジェクト成果物のEVMデータを生産プロジェク卜全体に展開する方法などが理解できるでしょう。

このようなEVMは、生産プロジェクトの進捗をダイレクトに表現する数値デ一タであり、その具体的な使い方は、多くの生産者が最も知りたいノウハウだと思われます。

さらに最後の章では、進捗管理に関連して発生するプロジェクトの危機的な状況と解決策を、いくつかの事例を用いて紹介したいと思います。

本記事で述ベるような、科学的・定量的なプロジェクト・マネジメントが、国際的に認知された手法として農業界で広く受け入れられることになれば、望外の喜びです。そして、 それが困難な生産プロジェクトを成功ヘと導いて笑顛でカットオーバーを迎えるための一助となることを願ってやみません。