前回は「WBSとプロジェクト進捗管理の関係」と題して、「プロジェクト作業の監視コントロール」はチーム・スケジュールで、その管理はプロジェクト成果物(ワークパッケージ)ごとに行うお話をさせていただきました。
栽培プロジェクト進捗管理をもう少し掘り下げて眺めてみましょう。
栽培プロジェクト計画書とベースラインの関係は、プロジェクト計画書本体の、プロジェクト・プランの欄にマスタースケジュールが含まれ、その農業生産工程ごとの作業内容は、計画書のすぐ下にあるガントチャートに記載します。
ここまでの説明で想像が付くと思いますが、マスタースケジュールに示されているのは農業生産工程名だけで、そこで「どのような成果物を何個作成するか」は分かりません。
それを記述したのが生産工程をコードに表したアグリハック・スケジュール(以降はAHSとします)で、AHSはマスタースケジュールとは表裏一体のものとなります。
このマスタースケジュールを実現するために、詳細資料である4つのベースラインを作成します。
それでは、それぞれのベースラインを考えてみたいと思います。
52週で区切った資源カレンダーは、マスタースケジュールを実現するのに必要な、資源のすべてを記載したものです。
月単位に栽培プロジェクトに投入する要員数、栽培プロジェクトを実行する畑のスペース、圃場開発機械の台数、使用エネルギー、生分解マルチなどの消耗品その他の、すべてを含めなければなりません。
単位はそれぞれの項目に適したもの、すなわち人月、台数、ワット、円などを使用すればいいでしょう。
この資源カレンダーに記載された項目のすべてを金額に換算して月単位に集計したものが、コストベースラインになります。
栽培プロジェクト進捗管理の評価を行うときは、この資源の使用状況の進捗判断が重要なため、明細を記載した52週で区切った資源カレンダーを使用しますが、最終的なプロジェクト全体の評価には、コスト・べースラインを使う。
栽培スケジュール・ベースラインは、チームでの栽培スケジュールを実現するための評価軸になります。
栽培プロジェクト農産物(ワークパッケージ)ごとの予定のスケジュールと予定工数は、AHSで定義したコードを見れば分かります。
栽培プロジェクト農産物の完成予定を年間52週で区切った週単位で集計することにより、目標日までに完成する案が作成されるという仕組みです。
一方で品質ベースラインは、栽培プロジェクト農産物の完成を発注者に承認してもらう必要がある場合に、その承認のスケジュールを明確にしたものです。
これが特に重要なのは、新規に栽培するテストケースでの商品開発フェーズです。
新しく取り組む農産物の栽培テストを畑で行うわけですが、これはテスト・シナリオに従ったテストであって、各シナリオごとにテスト結果の承認を発注者にしてもらいます。
すべてのシナリオがテストされて、発注者の承認が終了すれば、安心して栽培プロジェクトはカットオーバーを迎えられます。
この発注者の承認スケジュールを週単位に記載したものが、品質ベースラインとなります。
栽培テストでは、作業の進捗を示す栽培スケジュール・ベースラインよりも、品質ベースラインのほうが重要なベースラインとなります。
品質ベースラインはまた、カットオーバー判定基準書の中核にもなるので注意してください。