前回は「栽培プロジェクト進捗管理もグローバル・スタンダードに」と題して、経験をベースにした属人的な栽培プロジェクト進捗管理の問題点を整理してみました。
次の問題は、栽培プロジェクト進捗管理のコスト集計単位である農産物開発工程(要するにAHSコードです)が定義されていない栽培プロジェクトです。
AHSコードが定義されていないと、マスタースケジュールが描けません。
マスタースケジュールは、AHSコードで定義された農産物開発工程を、生産スケジュール作図法に従って描いたものだからです。
そんな状態でつくったマスタースケジュールの多くは、栽培プロジェクトの農産物開発フェーズの始めと終わりに、日付を記入しただけのものになってしまいます。
これでは、栽培プロジェクト遂行のベースラインにはなりえません。
このようなマスタースケジュールを目にする機会は多いのですが、そのほとんどが実体のない「掲げただけのスローガン」のようになります。
さらに問題なのは、コスト集計単位が定義されていないので、栽培プロジェクト進捗の評価を農産物開発工程単位に細分化できないことにあります。
これでは、農産物開発フェーズ単位でしかコストが集計できませんし、どんぶり勘定の評価になってしまいます。
こんな状況においては適切な対応策は打てないし、前述のベースラインのない栽培プロジェクトと同様に、ある日突然、危機的な栽培プロジェクトに変化する可能性が高いのです。
上記のようなことが起こる理由はいろいろ考えられますが、見逃せないのは、栽培プロジェクト・マネジャーの栽培プロジェクト進捗管理の知識がお粗末なケースです。
稚拙な進捗管理が、栽培プロジェクトの現場で行われていることが少なくありません。
栽培プロジェクト・マネジャーのなかにはガントチャートの作成法を知らない、4大ベースラインが作れない、マスタースケジュールの描き方が分からない、そして栽培プロジェクトで作成する成果物の定義ができない人が多いのです。
そんな現状では、栽培プロジェクト進捗管理を行ってもあまり意味がありません。
本来、栽培プロジェクトの進捗は、何か栽培プロジェクト農産物が完成してはじめて計上されるものです。
例えば、取引仕様書が栽培プロジェクト農産物として定義されているなら、その農産物が完成することで進捗が一歩前進します。
この原則を理解していないと、進捗報告で「予定通り」と報告されるだけですが、実態は担当者の進捗具合を感覚的にとらえてそう言っているにすぎない場合さえあります。
栽培プロジェクトの進捗は、栽培プロジェクト成果物の完成にあることに、目を向けてほしいと思います。
これを理解してはじめて、4大ベースラインやマスタースケジュールが意味を持つのです。