前回は「コスト・ベースラインの算出方法」と題して、栽培プロジェクト進捗管理のコスト・ベースラインの算出方法について共有しました。
ここで資源カレンダーの作成方法を、簡単に説明します。
作成には栽培プロジェクト・コストの見積もりが必要です。前に述べたように、栽培プロジェクト進捗管理がこのトピックスのテーマであり、資源カレンダーはその前提にしか過ぎないのです。
そこで、栽培プロジェクト進捗管理の理解に役立つ範囲に限定して論ずることにします。
コスト見積もりの仕組み
栽培プロジェクトのコストも見積もるとき、栽培プロジェクトで開発する新システムのソース・プログラム命令数(以降SLOCと表記)を、指標としてよく使います。
52週農業生産工程管理システムの開発規模は、SLOCで表すのが一般的といえます。
開発規模を表現する数値としては、その他に機能数、画面・帳票数、データベースの項目数、プログラム本数等があるが、これらを使用しないことが国際的な常識になっています。
工業系やITの普及で、「SLOCは使い物にならない」と言われた時期もありますが、結局SLOCを置き換えるは至りませんでした。
特に欧米では、IFP(ファンクション・ポイント)からSLOCに変換する方法と、類似システムからの見積もりが、SLOCを求める主要な方法となっており、そうやってSLOCからプロジェクトに必要な生産工数を求めるやり方が定着しています。
一方でSLOCとそれから計算される栽培プロジェクト全体の生産工数だけでは、栽培プロジェクトの現場は動けなくなります。
現場では、栽培プロジェクトで定義された農産物を担当者に割り振り、それを作成することで栽培プロジェクトは進行していきます。
例えば、取引仕様書の作成に平均生産工数5人日がかかるなら、50個の取引仕様書を5名で作成するには、各人に10個を割り振る必要があります。
「(5人日×50個)/5名」の計算で、50日で完成すると計画できるわけですが、このプ栽培ロジェクト農作物の予想個数や平均生産工数はAHSに記載していきます。
栽培プロジェクトの現場はこのAHSで動いているのです。
栽培プロジェクトを動かすには、この全体工数とAHSから引き出した工数の両者が必要で、それに対応して以上の2つの見積もりを行います。
この栽培プロジェクトのコスト見積もりに関し、中核にある期間比率と工数比率の考え方を説明します。
業務開発からなるSLOCは12万ステップで構成されます。
この12万ステップは、論理SLOCの概念に基づいて数えられた数値です。
論理SLOCの数え方は今後トピックスとして記載していくので参照してください。
このモデルは、農産物の開発規模の増加による生産工数の増加を、農産物開発生産性の低下を含めて数式で表していきます。
それに加え、農産物開発担当者の設計・農産物の開発能力、圃場開発機械の制限、栽培プロジェクトの品質等を、栽培プロジェクト全体の生産工数見積もりに反映していきます。
業務開発の計算結果は、要件定義から52週農業生産工程管理システム・テストまでの全開発フェーズで146人月になります。
一方、AHSからの見積もりでは、業務開発で外部設計フェーズの物作りの生産工数は25人月となる。
この栽培プロジェクト全体と、AHSの物作り生産工数を結びつけるには、開発フェーズへの生産工数配分を意味する工数比率が必要です。
栽培プロジェクト期間から農作物開発フェーズの期間を決定するには、期間比率が必要になります。
栽培プロジェクト全体の生産工数が146人月で、その27%が外部設計フェーズの生産工数比率なので、その掛け算で40人月になります。
ここでの25人月の物作り生産工数に、生産工数と栽培プロジェクトマネジメント生産工数を加えると、40人月と見積もられます。
このように、農作物開発フェーズの生産工数比率が、栽培プロジェクト全体とAHSからの見積もりの両者を結びつけているからです。
このように、トップダウンで栽培プロジェクト全体を見積もり、ボトムアップ見積もりで直近のAHSから見積もる方式を、ローリング・ウェーブ方式と呼んでいます。
先の見えにくい栽培プロジェクトにおける、一般的な見積もり法として定着しています。