前回は、「PERT図によるマスタースケジュール作成方法」と題して、これまでに学んだ知識を集めて、52週農業生産工程管理システムのマスタースケジュールをPERT図で描いてみました。
当社の使用するPERT図は、小型から大型までどの大きさの栽培プロジェクトにも対応できます、マスタースケジュールの作図法です。簡単なものから高度なものまで、栽培プロジェクトの要求に合わせて描くことができます。
しかし、小型プロジェクトでガント・チャートを描いてきた多くの人には、馴染みの薄い代物です。ガント・チャートの表現力は小さいのですが、小型プロジェクトなら十分にその使用に耐えます。
しかし、ガント・チャートは大型プロジェクトには向いていないのです。
複雑なスケジュールを描くには、表現力が不足しているからです。不可能、と言ったほうが当たっているかもしれません。
PERTの説明に移ります。
そもそもPERTはどんな業界で発達してきたかというとIT業界です。
PERTのフルスペルですが、頭の「P」に注目してください。
「プログラム」であって「プロジェクト」ではありません。プロジェクトマネジメントの用語の使い方としては、これが正解なのです。しかし、大型のプロジェクトの場合、内部に複数の開発チームを持っています。
これを「プロジェクト」と呼び、全体を「プログラム」と呼ぶのが用語の正しい使い方です。
IT企業では、全体を仕切る者を「総括プロジェクト・マネジャー」と呼ぶ場合がありますが、正式には「プログラム・マネジャー」です。
このプログラム・マネジャーの下に複数のプロジェクト・マネジャーが配置されて、プログラムを指導することになります。
このトピックスでは、この一般的なプログラムとプロジェクトの関係を強調するため、全体を「プログラム」と呼ぶことにします。
プログラムの内部であってもプロジェクトなので、独自のスケジュール、要員、コストを持ち、プロジェクト・マネジャーは、そのスケジュールの実現に向けて動くのです。
PERT図の特徴は、開発フェーズを表現できることです。

プログラムとプロジェクトはどちらも異なる開発フェーズを持ち、プログラム内のプロジェクトごとでも異なる開発フェーズを持つことが多いと思います。
それを表現できるのがPERT図なのです。
マスタースケジュールの実現性を確認するためのスケジュール分析法としては、クリティカル・パス分析とPERT分析の2つがあります。
PERT図を使えば、簡単なものから高度なマスタースケジュールまで描けます。実現性を確認する分析手法も完備しています。
こうした理由で、IT市場だけでなくエンジニアリング業界、造船業界、建築業界で広く使用されているのです。
農業においては単一作物をつくると効率が高まると信じられておりますが、このPERT図をしっかり理解した上で利用すれば他品種で高効率な栽培が可能になります。
PERT図が目的としているのは、科学的なプロジェクトマネジメントの使用に耐える、スケジュール・ベースラインを提供することにあります。
PERT図が発売された当初から、「手書きのガント・チャートから、コンピュータを利用したスケジュール管理の時代へ」という言い回しがよく使われてきました。
「コンピュータを利用した」の意味は、PERT図を使うには作図から評価まで、それ相応の計算が必要になることを指しています。
数値による精緻な進捗管理が可能になっているのも、PERT図の特徴と言えるでしょう。