ガント・チャートは、小型プロジェクトのスケジュールを描くために開発されました。
作図ルールの定義が曖昧でありますが、それがかえって、この図を使い勝手のよいものにしています。
ガント・チャートは、1903年のヘンリー・L・ガントの論文、“A Graphical Daily Balance in Manufacture”で発売されました。
論文のタイトルが示すように、物作りの工程管理をスケジュール表にして、科学的な管理手法を導入することが目的でした。
当時はちょうど、大量生産が始まったばかりで、フレデリック・W・テーラーの「科学的管理法」が発売されたのもこの頃です。
ガントの死後、ウォーレス・クラークが“The Gantt Chart : A working tool of management”を1992年に発売し、それがガント・チャートの名前を世に広めることになりました。
その後、多くの業界で使われるようになっています。
ガント・チャートの作図ルールは縦軸に作業名、または資源名を置いて、横軸には時間軸を置いたバーチャード(線表)です。
作業名にはタスク、またはアクティビティが使用され、その作業予定を横棒で表します。
資源名を縦軸に置く場合、それが担当者であれば、担当者の割り振り状況を示す図になります。
ガント・チャートの正式な作図ルールはこれだけです。
しかし、作図を行う市販のプロジェクトマネジメント・ツールには、次のような作図法を勧めているものがあります。
まず、開発フェーズの開始と終了を示すために、所要期間「0」の作業を置くように勧めています。
「勧めている」と書いたのは、これが強制的な作図ルールではなく、開発フェーズの開始と終了を示したいときに、このような作図法が可能であるという意味です。
加えて、作業の前後関係を示す「FS、FF、SS、SF」という表記を、矢印で示すことができるツールがあるのです。
ここで「F」は「Finish」、「S」は「Start」を意味し、「FS」とは「前工程の作業が終了したら、この工程を開始する」という関係を示します。
他の「FF」「SS」「SF」が意味する前後関係は、この説明の通りです。
この機能を実装したプロジェクトマネジメント・ツールの多くが、クリティカル・パス分析機能を持っています。
クリティカル・パス分析は、PERT図に出てきた機能を取り入れたものです。
さて、ガント・チャートを描く場合にも、プロジェクトマネジメントの原則に従うべきなことは当然です。
マスタースケジュールを描くには、作業名に開発生産工程名(AHSコード)を、チーム・スケジュールには栽培プロジェクト農産物(ワークパッケージ)を使用します。
ところが、この原則はガント・チャートの作図法には含まれていないのです。
それは、ガント・チャートの発表が1903年から1922年という、早期に行われたためだと思います。
当時、プロジェクトマネジメントの概念は乏しく、ガント・チャートも「科学的な生産管理のツール」として発表されていました。