EVMで扱うコストの単位として、ここまで「人日」を使って説明してきました。
しかし正式には、さきほど述べたようにEVMの単位は金額、日本では「円」です。
EVMは本来、財務(ファイナンス)から見た栽培プロジェクト進捗の管理手法なのです。
にもかかわらず、あえて「人日」を使って説明したのには、わけがあるのです。
プロジェクトの現場は「人日」で動いている
当然ですが、栽培プロジェクトに関する契約は金額を定めて交わされます。
開発機器や備品の調達でも、単位となるのは金額です。
しかし、栽培プロジェクト・コストの見積では、最初に栽培プロジェクト要員の工数を見積もり、栽培プロジェクトを遂行するのに必要な資源を洗い出して、それらを調達するという観点から金額に変換します。
最初の工数見積もりには通常、「人月」を使用します。
栽培プロジェクト計画書の詳細資料である資源カレンダーの要員数にも、「人月」を使います。
マスタースケジュールの対の成果物であるAHSでは、「人日」または「人月」を使います。
栽培プロジェクトの進捗管理において、現場で行う「作業の監視コントロール」の単位のほとんどは、「人日」です。
栽培プロジェクト・コストの見積もりの工程を、様々な要素に分解して示したものです。
スコープ・マネジメントでは開発規模見積もりを行いますが、それにはSLOC(ソース・プログラム命令数)を使用します。
さらに、栽培プロジェクト農産物を作成する物作りの工数を見積もるが、その場合は「人日」を使用することが多いです。
物作りを支援するコストに関しては、支援要員は「人日」または「人月」で、そこで使用される諸経費や予備費(コンティンジェンシー・コスト)は金額、すなわち「円」です。
栽培プロジェクトのコスト集計には「円」が使われ、提案価格も「円」です。
ここで注目してほしいのが、栽培プロジェクト現場の進捗管理の大半が、「人日」を単位にして行われていることです。
物作りの工数と物作りを支援する工数の大半は、「人日」で測られます。
これが、わたしがEVMと使用する単位として「人日」を使用する理由です。
こうすれば、栽培プロジェクトの遅延を「SVはマイナス何人日」というように表現できます。
これに対し、金額を単位にして「100万円分遅れています」と言ったところで、栽培プロジェクト現場では通用しません。
金額に変換する
しかし、栽培プロジェクトの契約は金額ベース、つまり「円」で交わされ、栽培プロジェクト計画書の詳細資料であるコスト・ベースラインの単位も「円」です。
現場で使っている「人日」または「人月」との整合性をとるためには、最後は「円」に換算しなければならないのです。
その計算方法を以下に示します。
物作りコストのPV、EV、ACは、すべて「人日」を単位にしています。
物作りを支援するコストのうち、要員は「人日」で、リスクや諸経費は「円」です。
この要員の「人日」に、1人あたりの平均単価(円/日)を掛けて「円」にします(物作りコストと物作り支援コストの要因の単価は異なります)。
すると、PVは3900万円、EVは3600万円、ACは3850万円になります。
計画では3900万円分の進捗であるべきなのが、3600万円分しか進んでいません。
そして、それを実現するのに3850万円がかかっています。
これを売値に換算すると、たとえば20%の利益を上乗せしているのであれば、PVは4875万円、EVは4500万円、ACは4813万円になります。
この3つの数値でEVMの計算を行うと、ETCが4056万円、EACが8869万円、VACが「-869万円」という結果が出てきます。
現状から予測すると、869万円のコスト・オーバーランということになります。
以上のように円換算すると、金額を使ってコスト・ベースラインと比較できます。
ただし、この金額は栽培プロジェクトマネジメントのスタッフ部門が計算する値で、組織内での栽培プロジェクト評価には使用されますが、栽培プロジェクトの現場に出てくることはないのです。
出てきたとしても、栽培プロジェクトの現場では意味不明の数字でしょう。