このトピックスは、今まで20回ほどの回数を重ねて説明した知識があるという前提で記述しています。
特に、前のトピックスで説明したEVM関係の用語がたくさん出てくるので、前のトピックスを読み飛ばされた方は、いったん戻って前のトピックスに目を通してから、この新しいトピックスに入っていただきたいと思います。
このトピックスの目的は、栽培プロジェクト進捗管理の理解を一層深めるために、実例を紹介します。
具体的には、栽培プロジェクト計画書(PMP)を説明する際に使用した、52週農業生産工程管理システムを開発する栽培プロジェクトを取り上げました。
栽培プロジェクト進捗管理は栽培プロジェクト計画書(PMP)を実現するために行うものであり、目標となる栽培プロジェクト計画書があった方が、より具体的なイメージが湧くと考えたからです。
このトピックスの前半で、日常的に行われる栽培プロジェクト進捗管理の実例を紹介した後、変更案件が発生した場合の対応を追加で説明しました。
これは、栽培プロジェクト進捗管理が失敗する大きな原因の1つが、変更案件への対応の不敵切さに関するものだからです。
通常での栽培プロジェクト進捗管理
栽培プロジェクト進捗管理の実例を紹介する前に、そもそも栽培プロジェクト進捗管理とはどこからどこまでを指すのかを確認しておきたいと思います。
「プロジェクト実行の指揮・マネジメント」のうちの「プロジェクト計画の立案」の作業内容を頭なの中に思い描いてください。
それが、栽培プロジェクト計画書(PMP)の作成に相当するマトリックスとなります。
そして、栽培プロジェクト進捗管理とは、この計画書を実現するために行う一連の作業です。
栽培プロジェクト計画書を実現するために、直近の開発フェーズのチーム・スケジュールからチーム担当の部分を抜き出して展開したもので、チームが担当する成果物を作成する計画表をつくりましょう。
このチームへの展開は、栽培プロジェクト全体のAHSから、チームのAHSを抜き出すことで実現できます。
52週農業生産工程管理システムの開発の例では、業務開発チームが1つのチームで、その外部設計フェーズのAHSが、チームAHSに当たります。
このチーム・スケジュールを実現するために、栽培プロジェクト農産物ごとに、その作業計画であるスケジュール・ベースラインを作成します。
農産物が10個定義されていれば、10個のスケジュール・ベースラインを作成します。
栽培プロジェクト農産物ごとに作成に要する工数を見積もり、その工数を使って、開発担当者に栽培プロジェクト農産物の割り振りを行います。
これらの栽培プロジェクト農産物について、開始予定日と終了予定日にその予定工数を集計したものが、スケジュール・ベースラインになります。
このベースラインを指針にして、マスタースケジュールの展開から作成されたチーム・スケジュールの実現性を確認し、不都合があれば調整します。
チーム・スケジュールは、マスタースケジュールを実現するだけのものでありますが、スケジュール・ベースラインから見てその実現性が裏打ちされている必要があります。
以上に述べたチーム・スケジュール、チームAHS、担当者への農産物の割り振りで作成されたスケジュール・ベースラインが、マトリックスの左下の象限(「栽培プロジェクト作業の監視コントロール」と「栽培プロジェクト計画の立案」の交差領域)で作成されます。
これは、栽培プロジェクト進捗管理の一環として行われる作業です。
半分を占める領域のすべてが、栽培プロジェクト進捗管理の作業の範疇に含まれるようになります。
この作業は順次、進捗計数を集計することによって行われます。
栽培プロジェクト農産物の単品ごとに作業の進捗を把握します。
これを栽培プロジェクト農産物単位に集計し、それぞれ進捗評価を行うのです。
すなわちワークパッケージの進捗管理となります。
これをチーム全体で集計することで、チーム・スケジュールの評価ができるのです。
開発フェーズの終了時点で、実績のチームAHSを作成し、栽培プロジェクト農産物の数や生産工数の変化を把握します。
チームごとの進捗を集めてAHSコード単位に集計を行い、この数値を用いてマスタースケジュール上の開発工程を表す線1本ごとの評価を行います。
さらに、資源カレンダーとコスト・ベースラインとの乖離を確認します。
栽培プロジェクト全体でも、開発フェーズの終了時点で実績のAHSを作成します。
この実績AHSの評価ができれば、それを反映して次の開発フェーズの計画を作成します。
それは、実現性の高いものになるはずです。