以上に説明したシステム・テストを確実に行うために、表のように、大きく分けて2つの進捗管理法を採用します。
第1の、テスト・シナリオ進捗管理は、主にサイクル・テスト「CT」の進捗管理のためのものです。
テスト・シナリオ達成率、テスト・シナリオのEVM、障害管理という3種類の指標を用いて管理を行います。
テスト・シナリオ達成率は、テスト・シナリオの総数に対して、現時点でどこまで終了したかを示すものです。
カットオーバーに向けて、どこまで達成したかを判断するには、テスト検証が終了した件数と残りのテスト件数の、両方が見えたほうがよいでしょう。
そこで、承認件数/総件数の式でテスト・シナリオ達成率を求めます。
テスト・シナリオのEVMも指標として用いられています。
テスト・シナリオの進捗が、スケジュール・ベースラインに沿っているかどうかを判断するとき使用します。
これは主として、受注者側が行う進捗管理です。
表の生産工数とテスト予定日が、スケジュール・ベースラインを作成する元データになります。
予定工数はそのまま使い、テスト予定日に関しては、テスト・シナリオの最初の取引のテスト予定日がテスト・シナリオの開始予定日で、最後の取引のテスト予定日が終了予定日になります。
期待されるテスト結果を事前に用意しておけば、テスト終了後の検証は短時間でできるので、最後の取引のテスト予定日が、検証も含めた終了予定日となります。
これに実績を加えて、EVMの計算を行います。
障害の発生と解決の状態を示す障害管理も、進捗管理に用いる指標の1つです。
システム・テストで発生した障害は、「発生直後に解決して、再テストを行う」ことが、システム・テストにおける障害管理の大原則です。
障害の解決に時間がかかる場合、次回のテスト基準日までに障害を解決するように管理をしなければならないのです。
もう1つ大事なことが、障害累積件数と未解決障害件数の把握です。
このためには、障害発生件数の累積予定曲線を事前に作成しておき、障害の発生件数がこれに沿っているかどうかを見極めます。
予定曲線は、障害のベースラインです。
障害は予想外に発生するものではなく、「予測した障害件数を達成するためにテストをする」というのが、本来の考え方です。
第2の進捗管理法が、カットオーバー判定基準の達成管理です。
これは、システム・テストで行われるすべてのテスト(サイクル・テストと運用テスト)で、カットオーバー判定基準を達成できているかどうかを管理するものです。
サイクル・テストのテスト・シナリオ進捗管理に加え、運用テストで行われる本番コンピュータ機器を使用した処理能力の確認(まる1日のコンピュータ運用を支障なく実行できるかどうか)を行います。
具体的には、レスポンス・タイム、単位時間当たりの処理能力、TAT(ターンアラウンド・タイム)が、目標値に達しているかどうかを管理します。
さらに、障害が発生した時の回復能力、障害を特定エリアに限定できるか等も確認されます。
カットオーバー判定基準の達成管理とは、上に列挙した確認を行うもので、受注者も全面的に協力する責任があります。
新システムへのカットオーバーを行うのに十分な機能、品質、処理能力、障害対応能力、運用可能性糖が達成できているかどうかを、総合的に判定します。
発注者の承認スケジュールが、品質ベースラインであります。
この品質ベースラインを実現するためにシステム・テストを行い、検証結果が発注者により承認されているかを確認します。
総合判断は、カットオーバー判定会議で下されます。