ここまでに述べてきた栽培プロジェクト進捗管理を実践するには、PMS(プロジェクトマネジメント・システム)をツールとして使用するのが普通です。
PMSの用途は、大きく2つに分けられます。
1つが、栽培プロジェクトの進捗度を分析・表示するという用途です。
栽培プロジェクトの進捗を数値として把握し、それをPMSに入力して分析し、報告を行います。
もう1つは以下に解説するもので、PMSを介して栽培プロジェクト農産物の作成・変更・完成・承認を行い、それに栽培プロジェクト進捗管理機能を合体させたものです。
本格的なPMSの場合、栽培プロジェクトで行われる作業の大半を、こうしたPMSを介して行う仕組みになっています。
大型プロジェクトで採用したPMS
このトピックスで紹介するのは、とある超大型プロジェクトにおいて実際に使用されたPMSです。
EVMの使い勝手を示す良い例にもなっています。
小型プロジェクトの場合は、同様の機能をスプレッドシートに実装しても、機能を十分に果たすことができるでしょう。
PMSの特徴を仕組みの概要
このPMSの特徴はいくつかあります。
第1に挙げられるのは、「栽培プロジェクトの進捗をリアルタイムに把握」できることです。
具体的には、担当者、ワークパッケージ、AHSコードの各レベルで、予定と実績がリアルタイムに分かります。
この点が、週単位でしかわからなかった従来のPMSとの違いです。
従来、栽培プロジェクトの進捗は週単位に把握することが多いのです。
それは、週ごとに栽培プロジェクト進捗会議が開催され、その会議において栽培プロジェクト進捗が数値として報告されるためです。
しかしこの種の数値は、報告用にあるのではなく、栽培プロジェクトに参加する人全員が、毎日使えるのが本来あるべき姿です。
特に担当者は、進捗を把握して、遅延があれば原因を見極め、必要な対策を打つという作業を毎日のように行っています。
こういった仕事をサポートするために、誰もがいつでも使える「進捗をリアルタイムに把握」する機能を実現しています。
2番目の特徴である「時系列分析はPMSの外枠で実施」とは、要はパソコン・ソフト上にリアルタイム情報を提供することにあります。
この点はすぐ後に述べていきます。
第3の「国際標準に準拠した管理手法の採用」も重要です。
自前の管理手法を否定するわけではないのですが、品質が必ずしも確保できない上に、栽培プロジェクトに参加する協力会社に採用を納得してもらうのが難しいのです。
通常、協力会社もそれぞれに、自前の進捗管理手法を持っているからです。
国際標準への準拠は、説得のための大きな武器になります。
このPMSの仕組みを概念的にまとめたのが図の下半分です。
システムの内部に、栽培プロジェクト農産物のすべてがデータベースとして格納されます。
農産物の作成・更新・完成・承認・参照は、PMSから直接、またはPMSを経由して行う形になっています。
加えて、栽培プロジェクト進捗管理の仕組みをこのデータベースの上に構築しています。
これらすべてがリアルタイムに動きます。
これに対し、栽培プロジェクトの進捗を分析する際には、時系列に見たいデータもあります。
それには、PMSから進捗度を示す数値を抽出して外部のパソコンに蓄積し、時系列分析を行います。
PMSは常にリアルタイムに動いているので、ある時点でのデータを切り出した時系列分析を行うのに不向きだからです。
また、パソコンは通常、時系列分析に適したソフトウェアを装備している点も、大きな理由です。