農業生産法人におけるサツマイモのコスト分析

超多収のためのアグリハック
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わたしの経営する農業生産法人ではサツマイモの品種である「べにはるか」と「スイートレッド」を栽培しています。

主な出荷は干し芋用に加工するために関東へと行きますがSサイズ以下のものは残りますのでこれをさらにペースト加工したり、青果用で販売しています。

そこで今回はその青果用でサツマイモを作った時のコスト分析についてご紹介したいと思います。

労働時間と収量

収量は複合経営が単一経営に比べて高いものの、県内サツマイモの過去5年の10a当り平均単収2500kgに比べ何れも低いという結果でした。

また、単価についても各事例で差がありましたが、これらは栽培形態、収穫時期、出荷時期がそれぞれ違うため一概には比較しにくいと思います。

複合経営だと9月収穫・出荷になりますし、単一経営なら8月収穫・出荷の早堀栽培のデータになります。

これは参考事例の収穫・出荷時期までは把握できないのですが、マルチ栽培なら7月から収穫・出荷できる最も早い作型でもあります。

一般的には収穫・出荷が早まるほど収量は低いものの、市場価格は有利になると思われます。

コスト把握と経営間比較

製造原価は種苗、肥料、農薬、光熱動力、諸材量、機械修理、機械施設減価

償却、支払い地代、雇用労賃であり、いわゆる売上原価です。

なお、機械修理費は購入価格÷耐用年数×修理係数0.04として計算しています。

地代は対象経営における借地畑の実勢小作料である1.5万円/10aとしました。

ここには水利権なども含んでいます。

雇用労賃は800/hrとしております。

複合経営における製造原価は5kg箱当り242円で、単一経営は344円で露地栽培の場合は236円、マルチ栽培は511円でした。

コスト対価格比はそれぞれ36、46、25、35%です。

農業生産法人における経営の製造原価のうち、上位を占める費目は雇用労賃、減価償却費、農薬費です。

複合経営以上に雇用労働力に依存している単一経営では、雇用労費の占める割合が37%と高いのが特徴です。

経営全体の年減価償却費は複合経営では230万円、単一経営では420万円になります。

しかし、複合経営ではジャガイモ、ダイコンとの利用共同によって、また単一経営ではスケールメリットにより、償却費が低減し、10a当りでみれば両経営はほぼ近い額となっています。

農薬費は土壌消毒剤が占める割合が高い結果となりました。

複合経営はジャガイモ、ダイコンそして緑肥と輪作を行うのに対して単一経営では連作となる期間が長くなります。

複合経営は単一経営に比べて農薬費がやや少なく、こうした土地利用が関係していることも推察できます。

総原価

これは製造原価に販売管理および一般管理費を加えたものです。

複合経営は系統出荷、単一経営は個別に市場出荷を行います。

出荷市場は複合経営が京都合同青果と大阪合同成果、単一経営は関東出荷中心です。

このため運賃に差があるものの、それ以外の両経営の費用はほぼ同額となっています。

複合経営の総原価は1箱当り398円、単一経営は490円であり、コスト対価格比はそれぞれ53、65%です。

企業的総原価

総原価に支払利子および自家労賃を加えたものです。

自家労賃は1,500円/hrで計算しています。

複合経営の企業的総原価は1箱当り550円、単一経営は607円であり、コスト対価格比はそれぞれ73%、81%でした。

社会的生産費

企業的総原価に自作地地代見積および自己資本利子を加えたものです。

自作地地代見積は地域の畑地小作料である1.5万円/10aとしています。

自作地への作付割合は各作物とも一定として計算しています。

同じように水利権等はここに含みます。

自己資本利子のうち流動資本は変動費合計の1/2(平均資本凍結期間6ヶ月)に年利率4%を乗じています。

労賃資本は雇用労働費と家族労働費の合計の1/2に年利率4%を乗じました。

固定資本は負担部分の現在価格に年利率4%を乗じると複合経営の社会的総原価は1箱当り589円、B単一経営は682円であり、コスト対価格比はそれぞれ76、91%という結果になりました。

複合経営と単一経営の収益性

両タイプの経営の収益性は、加工じゃがいもや加工ダイコンの単作ではサツマイモを上回る所得形成力はありませんが、加工じゃがいも+加工ダイコンの作付体系であればサツマイモ単作の所得を上回ることが可能です。

ただし、地代支払い能力を示す土地純収益は、加工ダイコンの労働生産性が相対的に低いために、サツマイモ単作より若干低い数値を示しています。

しかし、どちらの場合であっても十分な収益を確保しているという結果でした。

いわゆる家族的な経営では基本的に農業所得を向上させることが目的となり、一方企業経営では投下資本に対してどれだけの利潤をあげるかが問題となります。

家族労働力を上回る外部労働力を導入して多額の固定資本投資を行っている単一経営は、家族経営を超えた雇用型経営ともいえる経営内容となります。

そこで、複合経営と単一経営とにおける収益性を、投下した総資本に対する利潤形成力で比較してみた結果、投資額に対して利潤が大きく、かつ、高い売上のある複合経営が有利となることが明らかとなりました。

また、経営に投下した総費用の利潤形成力を示す生産性についても、同様に複合経営が有利となっています。

つまり、経営部門を単一化しているからといって単純に生産性が向上する結果にはなっていない。

資本の利用度をみると、仮に借地も含めた経営耕地を土地資本として評価した場合は、両経営とも同程度の資本利用度になるものの、自作地のみを評価した場合には複合経営が有利となっていました。

こうした結果は、土地や機会及び労働力の利用共同、効率的利用が可能である複合経営の特徴を示すものだといえます。

コスト低減対策

一般に、土地利用型農業における土地や労働力、機械施設など固定装備の利用を適正化するためには、複合化が志向されます。

前節での検討の通り、経営の複合化は経営資源の有効利用に寄与するとみられますので、サツマイモの製造原価において上位を占める費目である労働力、機械・施設、資材などのコスト低減の方策として経営の複合化を提言したいと思います。

さらに、複合経営では適正な輪作体系によって資材投入量を低減させることが可能であります、土壌生産力の維持・増強を考慮した合理的な土地利用体系が構築されれば、土壌消毒量など農薬の低減や、残存窒素などを利用して、負担の少ない農業生産が可能だと考えております。

こうした技術が環境保全型としての位置づけにあることを、消費者サイドを含めて認識してもらえれば、付加価値をつけた販売・流通が可能となり、収益性の向上につながることが期待されるのではないでしょうか。